「なんて?」 興味なさそうに棚に並ぶ珈琲豆を眺める男。 イラッとは来たが、話を続ける。 「私の父は資産家で莫大な遺産があるんです。」 「いくら?」 「20億と聞いています」 「莫大だな。」 男がすこし驚いたように身を仰け反らせる。 「でも、父はガンで余命二年……。遺産の相続権を愛人である女にやるって、言い出して……。それで母はなんで、他人に遺産をやらなきゃいけないのかって」