「あら、沖田さんじゃおりませんか」
店の奥からはお菊さんと呼ばれる女性が出てきた
30代くらいだろうか
綺麗な夕日色の着物を着ていた
そして彼女は沖田さんに送った視線を
次は私に向けた
「沖田さんが女性を連れてるなんて珍しいですなあ」
お菊さんは私を頭からつま先まで
じっくりゆっくり眺めた後
べっぴんさんやなあ
そう言って微笑んだ
お母さんみたいな
そんな優しいオーラを放つ人だった
「この子に袴二着と着物一着、選んでくれないかな。僕は外で待ってるから」
沖田さんはそれだけ行ったあと
本当に私だけをおいて店の外に行ってしまった
お菊さんは"袴?"と不思議そうな顔をしていた
そりゃそうだろう
女の私が袴なんておかしな話だ
でもお菊さんは状況を把握したみたいに
すぐにっこり微笑んで
「こちらへ」
そう言って案内をしてくれた

