そしてトタトタと誰かの足音が近づいてきたかとおもえば
すっとふすまが音を立てて開いた
誰かと思い目をやると予想外の人物がそこに立っていた
「沖田さん?」
「手当て、終わった?」
私の声なんか聞いちゃいない
沖田さんは山崎さんにそう問いかけた
ちょっとこの人、苦手かも
何考えてるのか全然わかんないし…
山崎さんはコクリと静かに頷き
私達は治療場を出た
そして山崎さんは土方さんたちに報告してくると言って広間に戻ってしまった
目の前には沖田さんだけ
「出かけるよ」
沈黙を破ったのは沖田さんの方だった
出かけるってどこへ?
思いがけない言葉に
私はうつむいていた顔を上げた
そしてそこにはやっぱり微笑む沖田さんがいた
「君の袴と刀を買いに行けって副長命令」
意味がわかっていない私に
沖田さんはそう説明してくれた
そうか、男装しろって言われたんだった
でも、なんで刀?
私は料理長を任命されたよね?
「あの、なんで刀…?」
すっかり怯えてしまった私は小さな声で問う
すると彼は
はあっ…と大きくため息をついて
呆れ気味に私を眺めた
それはどことなく土方さんの呆れ顔に似ているような気がした
「自分の身は自分で守れ」

