「うっ…」


目にも止まらない早さだった

勢いの良い彼の槍は一瞬で浪士を捉えた

その場に倒れこむ浪士

きっと…死んでしまっただろう



「さっすが左之さん!」



男の子はそう言ってガッツポーズをした

左之さん…って

もしかして原田左之助?



十番組組長 原田左之助
短気な性格で上官の武士と喧嘩した際切腹したことがあり腹に一文字の傷が残ってるという



まさかこんなところで会うなんて

思いもしなかった



「おまえ、大丈夫か?」



男の子はそう言うと私の顔を覗きこんで

私の頬を軽くなでた

それと同時に再び涙がこぼれだした


ほろり、ほろり、と


頬に触れる指が暖かくて

ほんの数分前の出来事が嘘みたいで



「わりぃ!痛かったか?」



違う、違うの

痛くなんかない

どこも痛くないけど…



「お父さん…」


心が痛すぎた


溢れでる涙のようにぽつりと出た名前

お父さん、私は大丈夫だよ




お父さんは…