事故かな、と人の間から顔を出し様子を伺おうと試みるが全く見えない。
とりあえず近くにいたお兄さんに話しかけてみる。
「あの、事故ですか?」
お兄さんはキョトンとしてからにっこりと頷いた。
「うん、人が轢かれたんだ」
「あ、そうなんですか。あまり大きな怪我してないといいですね」
やっぱり事故だったんだ、と呟いてお兄さんにお礼を言い、学校へ向かおうと歩き始めたところで気付いた。
携帯を家に置いてきてしまった。
今の時刻を確認する。
「8時…」
今ならまだ間に合う。急ごう。
再びあの事故現場へとやってきた。
少し人が少なくなっていてよく見えた。
体から血を流して腕があり得ない方向へと曲がってしまっている男性の姿が。
…事故には遭いたくないなぁ。
こんなに酷いものなのか。
案外こういう現場などを見てもショックは受けないんだな、と思いながら通り過ぎる。

