父親はいない。
俺が小学生の時に離婚した。
だから母親の旧姓である、“相澤”になった。
俺はこの名字が大嫌いだ。
「いいか、
髪は黒に戻せ。
ピアスもつけてくるな」
「……気が向いたらな」
『こら待て相澤!』と叫んでいる教師を放って、職員室を出て教室に向かう。
すると途中で友達の晴希に会った。
晴希とは、小学校からの付き合いだけど、
最近彼女が出来て、前ほど遊んだりはしなくなった。
まぁ別に、無視したりとかしてるわけじゃないし、
学校では普通に話してんだけどさ。
「蓮、
また先生になんか言われたん?」
「……髪を黒に戻せ、
ピアス外せ、だって」
「いつも通りじゃん」
クスクスと笑ってる晴希。
コイツは、俺の両親が離婚したことを知ってて、
俺がこうなったことにも、何も言ってこない。