「わーーー!! 何なんだ一体?! ここは何処だ!!」
突然、目を覚ました一人の青年がパニックを起こし、大きな声で喚いていた。
彼のことを、よく見てみると右腕に入れ墨で名前が刻まれてある。
「......ナ......夏輝?」
「は?」
青年はそう言って、声のした背後を振り向くと、ようやくユウナの姿に気がついた。
「だ、誰!? ......なんで、俺の名前を知ってるんだよ!」
「......右腕に書かれてあるわ」
そうして、夏輝は自分の右腕を確認する。
すると、他に辺りで眠りについていた濃い顔をした男は目を覚ました。
「おい! ......うるさいぞ、クソガキがぁ」
そう言って、起き上がると男は我に返り、自分の置かれている状態にやっと気が付いた。
「ど、何処だ......ここは......。おかしい、俺は自宅のベッドで寝てたはずだぞ!」
“「落ち着いて」”
ユウナと夏輝は声を揃える。
「......お前ら、何もんだ?」
「ユウナ。そして、こっちが......」
「夏輝だ。......おじさんは? 見たところ、アルベルトって感じだけど」
「クソガキが......まぁ、いい。ケンジだ。ところで、このクソつまらない真っ黒な部屋は一体何なんだ?」
「......私も、分からない」
「監禁部屋なんじゃない? ......それか、ドッキリ番組」
夏輝はそう言いながら、黒い部屋を見渡した。
「そうだとすれば、何処かにカメラがあるはずよ」
「よし、手分けして探そう。ユウナちゃんはそこの壁を......」
そう言ってケンジは、ユウナの背後の壁を指さした。
「俺はここを調べよう」
そうして、ケンジは自分の背後にある壁を調べ始める。
ユウナは、壁に両手を付けると何処までも黒い、ただの壁を見詰めた。
ケンジは、壁を乱暴に何度も何度も叩きつける。
この正方形の真っ黒な部屋の中、ケンジが壁を叩きつける音は轟音に鳴り響いていた。
すると、ついに壁は壊れた。そこにカメラは無い。壊れた壁は空洞でただ、真っ暗なだけであった。
そうしてケンジは、ようやく一息ついた。
「ふぅ......。お前はボケーっと突っ立ってるだけか。楽なもんだぜ」
「なぁ......ケンジ......」
怯えた声で、夏輝は壊れた壁を指さした。
その手は、ぶるぶると震えている。
「あ?」
そう言って、ケンジは背後の壊れた壁の方に目を向けた。