不機嫌少女な璃子

「ただいま」

無愛想な声がした。

見ると、その少女はどたどたこちらへスポーツバッグを抱えて歩いてくる。

スポーツバッグが大きすぎて、顔が見えない。


どうやって歩いてきたのか、麻実は不思議に思った。

「ふぅーっ」

不機嫌そうに唸り、スポーツバッグをおろす。

「お母さん、暑いんだから扇風機付けといてってって言ったじゃん!」

そう、開口一番に怒鳴る。

だが、お客にすぐ気づいた。

顔を真っ赤にし、恥ずかしそうに俯く。

黒髪のショートボブで、目元がきゅっと引き締まっている。

「どちら様ですか?」

と、蚊の鳴くような声で尋ねる。

「ちょっと!」

いきなり、朋子が入ってきた。
「あなたたち、夜蛍山で話してきなさいよ。暑いんでしょう?璃子。ほら、貴方達、荷物をここに置いて、ほら行ってきなさい」

朋子は言うが早いか、麻実達を放り出し、自分はぷりぷりと家に戻ってしまった。

璃子という少女に怒鳴られたのが気に入らないのだろう。

ともかくも、この不機嫌少女と麻実達は四人きりになってしまった。

さて、どうするべきだろう。