「暑いー。アクエリもっときといて良かったー」

七月下旬。夏休み待っさかさり。

スポーツの強豪校である神田中学校。

全国大会に出場するほどの実力のあるテニス部。

そこの1年エース、麻実は今、テニスコートの近くの木の下で休憩していた。

「おい、麻実(まみ)、お前もそろそろ休憩終わらせろよ、試合やろーぜ」

大輝が言った。

長谷川大輝。テニス部1年男子のサブエース。

「やだよー、練習終わってもこうやって付き合ってあげてんだからね?
休んでたって罰当たんないわよ」

「チッ。ほんとに憎たらしいな、お前」

「結構よ」

「おい、圭太も何か言ってくれよ」
大輝は圭太に助けを求めた。

「うーん、練習してる間、第2コートで売ってれば?麻実」

「そうだなぁー、そうしようっと」

「さすが圭太!ブラボー」

大輝は拍手をした。

「うるさいわねぇ、もともと練習は12:30には終わってるの!

あんたが吉野先生に1:30まで練習させてって言ったんでしょう?

あたしはもう帰ってるはずなの!」

大輝はふて腐れた顔をすると、圭太に「もう買えろーぜ」

と言った。

圭太は、微笑をし、大輝の肩を叩いた。

三月原圭太[みつきはら けいた〕
は、テニス歴5年のジュニアだ。

実力は文句無しの天下一品。

人柄も良く、大人しい性格だった。

そして、顔も知的で麗しく、才色兼備だった。

反面、大輝は暇を持て余した犬のような性格で、活発でスポーツ大好きだった。

テニスは中学校からというが、あっという間にNo.2にのし上がったことから、才能はあると見られている。

「あ、帰るの?じゃあ、あたし鍵返してくる」

麻実は、ぱっと駆け出した。

麻実は、ショートカットの小顔で、可愛らしい顔をしていた。

目はくりっとしていて、二重はパッチリとしていた。

「うん、よろしく、ごめん麻実。
大輝、ほらボールとか片付けるぞ」

「へいへい」

この3人は、幼なじみだった。

いつも仲が良く、一緒にいたのだ。
「なーなー、暇だし、肝試ししねー?」

大輝のこの一言から、あれは始まった。