「有史(ゆうし)、行くぞ」
そう言って、私のことをちらりとも見ることもなく歩いていこうとする深梨君。
有史とは、田中君のこと。
「ちょっ、藤咲さんどうするの?」
「あいつが動かねえんだから、こっちが動くしかないでしょ?あいつがいるだけで腹が立つ」
私のことを時々視界に入れて、深梨君と会話する彼の優しさは、迷惑。
早く、深梨君とどこか行ってよ。
もう、これ以上嫌われたくない。
田中君は悪くないのに、責めてしまう自分が酷く醜い。汚い。
「あいつって......藤崎さんおいてくの?」
「そんな目障りなやつなんかほっとけ」
「そんな言い方しなくても...、彼女でしょ?」
やめて、
やめてよ、
お願いだから、やめて。
私を庇わなくていい。