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学校から一番近いショッピングモールにきたのだけれど、佐奈ちゃんを見失ってしまった。
どうしよう。
電話しようかとも思ったけど、連絡先を聞いていないからできなくて。迷うことしかできない。
ここから下手に動き回ってしまえば佐奈ちゃんとすれ違ってしまうかもしれない。
だからといって動かないとなると、佐奈ちゃんが私を見つけてくれるのを待つことしかできなくなる。
うーん、帰るわけにもいかないしな。
「おい」
一般的に言う、低くて機嫌の悪そうな聞き覚えのある声に、思わず肩を揺らす。
でも、彼の場合今日は機嫌がいいのだ、と思う。
案の定、振り返ってみれば深梨君がいた。
「お前何してんの」
「佐奈ちゃんとはぐれちゃって...」
「一緒に探すか?」
いつになく優しい顔でそう言われて思わず頷きそうになるが、ここで頷いては駄目だ。
この甘さに酔ってしまう。
麻痺してしまう。
そう判断し、首を横に振る。

