『かごめかごめ 
 かごのなかのとりは
 いついつでやる
 よあけのばんに
 つるとかめがすべった
 うしろのしょうめん
 だあれ?』

 夕焼け空に響く声。

 少女は歩く。

 その声の方へ。

 やがて見えてきた同い年ぐらいの子どもたち。

『いーれーてー!!』

 少女はかけていく。

 そしてそのまま、戻っては来なかった。
     †      †
 春樹は荷物を持ち上げた。

 先に運んでもらえばよかったのたが、諸事情によってそういうわけにもいかず、こうして重い荷物を持っている。

「春、よく来たねぇ。」

 列車から降りると、ばあちゃんが待っていた。

 曲がった腰に、おだんごの白髪。

 目尻のしわは優しげに刻まれている。

 あぁ、ばあちゃんだ。

 そう思いながらほほえむ。

「突然ごめん、ばあちゃん。二週間だけだからさ。」

「うんにゃ。いつでも来なせぇな?」

 おぅ、と答えながらも歩き出す。

 笹の葉が揺れる道。
 
 茶色いあぜ道は懐かしさを溢れさせる。
 
「何年ぶりだろぅねぇ…。あぁ、お前さんが四歳のころぶりかい?大きくなったねぇ。」
 
 ススキがさわさわと揺れる。

「もう15歳だからね。成長期真っ盛りだよ。」

「ははは!そうかいそうかい。頼もしいねぇ。」

 懐かしい風景。

 なんだか胸がいっぱいになる。

 と、流れる景色の中に、古びた屋敷が見えた。

 そこだけなんだか不思議な雰囲気で、なぜか惹かれた。

「ばあちゃん、あれ…。」
 
「あぁ、あれかい。」

 ばあちゃんは複雑そうな顔をした。

「忌み子の屋敷さ。あんまり関わるんじゃないよ。」

「いみこ…?」 
 
 ばあちゃんはため息をつく。

「ま、関わるんじゃないよ。」

 有無を言わせぬ物言いに押し黙る。

 ばあちゃんがここまで言うくらいだから、きっと本当にまずいのだろう。

 仕方なく言及を諦める。
 
 が、やはり気になった。

 あの雰囲気がなぜか、肌に残って消えなかった。