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「うひゃ~、まいったまいった。すっかり濡れ鼠状態でさァ」
「そうだな」
水を含み、色が濃くなった羽織を脱ぐ。
外は篠突くような豪雨だった。
今日は3番隊と8番隊が巡察をしていたのだが、その途中で大雨に見舞われた。
巡察を中断して帰ってきたのだが、身体や着物は余すところなく濡れてしまった。
「斎藤、平助。戻ったのか」
薄暗い廊下の奥から副長が歩いてくる。
副長から感じる重苦しい空気を肌で感じた途端、いやな予感が全身を貫いた。
「土方さん、どうかしたんですかィ?顔がいつもの数段恐ろしいことになってますぜ」
「帰って来たばかりで悪いが、すぐに着替えて広間に集まってくれ」
そう言い残して副長は踵を返してしまう。
いつもなら平助の軽口に反応するがそれもない。
……やはり、何かあったな。
軽く身なりを整えたあと、平助と広間に向かう。
広間にはそれぞれの隊の組長そして副長と局長がそれぞれ険しい面持ちで座っていた。


