蒼蝶は俺に助けを求めてたんだ。
それなのに、蒼蝶を残して町を出てしまった。
蒼蝶なら大丈夫だって思ってたんだ。いつも自分で道を切り拓いてきた蒼蝶なら何とかするって。
その思い込みの結果がこれだ。
いつもと様子が違うのは分かってたのに、どうして俺は傍にいてやらなかったんだ。
もし、俺が傍にいたらこんなことにならなかったかもしれないのに……。
しばらく以蔵と二人で部屋の外の廊下で待っていると、襖がガラッと開き医者がでてきた。
「先生、蒼蝶ちゃんは?」
俺よりも早く以蔵が医者に言った。
医者はどこが話し難そうに表情を曇らせている。
「顔面の打撲、それに右足首には酷い捻挫があった。それに何より、彼女は死病に侵されている」
「死病って……」
「彼女は労咳だ」
「労咳……?蒼蝶が?」
医者の言葉が信じられなくて、どこか遠くから聞いている気がした。
労咳に治療法はなく、発症すれば高い確率で死亡する。


