医者の男を寺田屋まで連れてくると、蒼蝶は布団の上に寝かされていた。
さっきは気付かなかったけど、顔には殴られたような箇所があり、青痣になって腫れ上がっている。
唇は真っ青で、着物の隙間から見える肌全てに血の気がない。
呼吸で胸が微かに上下していなければ、死人と区別がつかないだろう。
それだけ蒼蝶の変わり果てた姿からは生気というものを感じなかった。
「これは……」
医者は平常心を装っていたけど、声から微かに動揺を感じた。
やはり医者の目から見ても蒼蝶の姿は異常なんだ。
「早く診てやってくれ」
「あ、ああ。そうだな」
医者が蒼蝶の身体を診察し始める。
傍らでその様子を眺めていると、突然頭に何かが被さった。
「龍馬、とりあえずそれで拭き」
以蔵が俺の頭に乗せたのは手拭いだった。
さっきまで気にならなかったけど、着物は変色するほど濡れていて、身体は冷え切っていた。


