私の師匠は沖田総司です【下】


「おい!蒼蝶!」

持っていた傘を投げ捨て、蒼蝶の身体を両腕で抱え上げた。

軽い……。

元々軽かったのに、さらに軽くなっている。

「蒼蝶!蒼蝶!」

いくら呼びかけても蒼蝶はぐったりと目を閉じたまま、意識を取り戻す気配はない。

俺がいない1ヶ月に一体何があったんだよ。

いや、今は考えてる場合じゃない。

蒼蝶を助ける方が先だ。

蒼蝶の身体を横抱きにすると、俺は急いで来た道を走る。

寺田屋につくと俺は全身ずぶ濡れのまま部屋に上がり、以蔵の部屋に向かった。

「以蔵!」

「ひっ!……あ~、びっくりした。一体何や」

今まさに団子を喰おうとしていた以蔵が驚いた顔で俺を見る。

以蔵は俺の腕に抱えられている蒼蝶を見た瞬間、さらに驚きを重ねた。

「蒼蝶ちゃん!何でこないなことに……」

「何があったかは分からねえけど、取り敢えず今は医者だ。今から呼んでくるから蒼蝶は任せた」

「分かった。ウチに任せとき!」

蒼蝶を以蔵に任せると、俺はすぐにまた外に飛び出し雨の中を走った。