「おい!蒼蝶!」
持っていた傘を投げ捨て、蒼蝶の身体を両腕で抱え上げた。
軽い……。
元々軽かったのに、さらに軽くなっている。
「蒼蝶!蒼蝶!」
いくら呼びかけても蒼蝶はぐったりと目を閉じたまま、意識を取り戻す気配はない。
俺がいない1ヶ月に一体何があったんだよ。
いや、今は考えてる場合じゃない。
蒼蝶を助ける方が先だ。
蒼蝶の身体を横抱きにすると、俺は急いで来た道を走る。
寺田屋につくと俺は全身ずぶ濡れのまま部屋に上がり、以蔵の部屋に向かった。
「以蔵!」
「ひっ!……あ~、びっくりした。一体何や」
今まさに団子を喰おうとしていた以蔵が驚いた顔で俺を見る。
以蔵は俺の腕に抱えられている蒼蝶を見た瞬間、さらに驚きを重ねた。
「蒼蝶ちゃん!何でこないなことに……」
「何があったかは分からねえけど、取り敢えず今は医者だ。今から呼んでくるから蒼蝶は任せた」
「分かった。ウチに任せとき!」
蒼蝶を以蔵に任せると、俺はすぐにまた外に飛び出し雨の中を走った。


