でも何かがあるのは確かだ。

近付くにつれ、徐々にその姿が鮮明になってくる。

最初は大型の犬が蹲っていると思ったが、それはそれよりも大きい。

人か?

歩調を速めると、それは見覚えのある着物を着ていた。

まさか、と思って走り出す。

いやな予感が全身を駆け巡る。

予感は外れて欲しいのに、その姿が俺が知っているものと重なっていく。

俺がよく知る人物に……。

足をとめ、俺は見下ろした。

「蒼蝶……」

名前を呟き、道に倒れていた人の正体を本当に理解した瞬間、さっきまで聞こえていたあらゆる音が消えた。