女は勝ち誇った顔で僕を見る。
まさかこんな形で僕が不利な立場になるとは思わなかった。
どうする……。
この状況を見られたら確実に蒼蝶が怪しまれる。
逃げる?
いや、でもどこに?それに、逃げたとしてもますます蒼蝶の立場が悪くなるだけだ。
「天宮さん!」
最良の考えが浮かばない内に近くで僕の声が聞こえた。
-……組長?
『ぐっ……!?』
突然、身体の奥から蒼蝶の声が聞こえた。
そして僕の意識が薄れる感覚。
まさか、この時代の僕の声に反応して蒼蝶の意識が表に出てこようとしてるの?
『蒼蝶、ダメだ……。今、出てきたら……』
-……組長が呼んでる。早く、行かなきゃ……。
さらに蒼蝶の意識が強くなるのを感じる。
抑え込もうとしても、外から入り込んだ存在である僕よりも、蒼蝶の意識が優先されて抑え込めきれない。
『蒼蝶……』
蒼蝶の名前を呼んだのを最後に、僕の意識は奥に引きずり込まれた。


