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蒼蝶と意識が入れ替わると同時に、目の前にいた男の腹を力の限り蹴った。
蹴りが鳩尾に入ったのか、男は情けない呻き声を上げ地面に胃の物を吐き出す。
そして、そのまま小刀を向けていた男に隙ができたのを見逃さず、小刀を奪いそいつの腿に突き刺した。
『どけ』
凄みを利かせて言うと、蒼蝶の周りにいた奴らは逃げるように距離を取った。
刀の柄に手を当てているけど、抜く気配はない。
僕は腿から血を流し悲鳴をあげる男に止めを刺すと、立ち上がり頬に触れた。
頬に指を滑らせると、指先に赤い血が付着する。
また、殴られた箇所は熱をもち、鈍い痛みが継続的に襲う。
足首にも腫れるような痛みがある。
身体もずいぶん弱っていた。
……なにより、気になるのは胸の違和感。
蒼蝶……、まさか君は。
『蒼蝶、ごめんね。少し無理をするよ』
僕は血の付いた小刀を軽く握りしめ、静かに構えた。
そして、刀を抜き始めた男たちに向かって走り出し、小刀を振るった。


