「返して!」
懐中時計を奪い返そうとしましたが、両腕を拘束されているせいで手が届かない。
それをいいことに、艶子さんはわざと私の顔の前に懐中時計をぶら下げ、挑発してくる。
「蒼蝶さん、ずいぶん必死やね。これ、そんなに大事な物なん?」
「お願いします、返してください」
「ふふふ、どうしようかな~」
艶子さんは懐中時計の鎖を掴み、柱時計の振り子のように左右に振る。
鎖が千切れないか気が気でならない。
しばらく私を見ていた艶子さんでしたが、笑みをさらに深めると、懐中時計を握りしめ腕を振り上げた。
高々と上げられた腕に目を見開く。
「や、やめ……!」
止めようとしたけれど、それも虚しく懐中時計は地面に叩きつけられた。
地面を跳ねると、ガラスが割れるいやな音が耳を震わせる。
力なく地面に仰向けに横たわる懐中時計を見た瞬間、全身が怒りに震えた。


