私の師匠は沖田総司です【下】


取り巻きの一人が私の隣に座る。そして、どこからか取り出した小刀を抜き、周りから見えないように私の腹横に当てた。

「これは何のつもりですか」

「ふふふ、ちょっとついてきてな」

艶子さんの不審さを匂わせる笑み。

おそらく、断ったり逃げ出そうとしたら、この小刀で身体を斬りつけられるでしょうね。

「……分かりました」

立ち上がり、足首の痛みを堪えながら艶子さんたちに着いて行く。

私を挟むように二人の間者隊士がぴったりとついて来るため、警察に捕まった犯罪者のような気分になります。

そして、誰の目にも触れることなく、私たちは屯所の裏庭に来ました。

すると、すぐさま両腕の掴まれ自由を奪われる。そして先程まで腹に当てられた小刀が首に移動した。

抵抗しても、男の力に敵うわけもなくビクともしません。

「それで、私をどうするつもりですか?」

抵抗する気力を失った私はいつもより声を低めて艶子さんに尋ねました。

彼女は私に近づくと、手を伸ばし私の懐を探り始めた。

「なっ……!」

驚きで息を呑むと、瞬く間に艶子さんは私の懐から懐中時計を引っ張り出した。