すると、斎藤さんはまたフッと笑いました。今度は苦い笑みではなく、優しい笑みです。
「天宮のいいところは素直に人を褒められるところだな。おまえのおかげで俺の心は救われた」
「えへへ、そうですか?」
褒められたのは久しぶりなので照れちゃいます。
しかも褒めてくれたのは普段あまりしゃべらない斎藤さんなのでなかなかレアです。
嬉しくて頬っぺたが緩む感じがしますね。
よほど私がしまらない顔をしていたのか、斎藤さんが「何だその顔は」と言い、私の頬を指で突っつきました。
むふふ、頬っぺたを突っつかれる感覚も久しぶりです。
「……天宮、顔が熱いぞ。熱があるのか?」
私の頬に触れたため、熱があるのを気付いたようです。
私は斎藤さんを安心させるようにニッと笑ってみせました。
「これぐらい大丈夫です!斎藤さんからお団子を貰ったので、これを食べたらすぐ元気になります!」
「そうか?あまり無理するなよ」
「はい!」
斎藤さんと別れた後、私は自室に戻りました。居場所がない屯所で自分の部屋が一番安らげるところです。
部屋に置かれた文机には龍馬さんからお借りした懐中時計があり、刀掛けには師匠の刀があります。
そして手元には斎藤さんから頂いたお団子。
私は一人じゃない。頑張ろう。
私は弱っていた身体と心を引き締めるように気合を入れました。


