「天宮は変わった返事をするんだな」
私に話し掛けてきたのは斎藤さんでした。
斎藤さんは私の返事がよっぽどウケたのか、クスクスと可笑しそうに笑っています。
ここしばらく見てなかった人の笑顔に、心が少し軽くなった気がしました。
「……天宮の笑った顔、久しぶりに見た」
「え?」
気付かないうちに私も笑っていたようです。
そう言えば斎藤さんの言う通り、私も笑ったのは久しぶりな気がします。
辛くて暗い顔ばかりしていましたからね。
すっかり表情筋が硬くなってしまっています。
「笑えたのは斎藤さんのおかげです」
「そうか。だったらもっと笑顔になれる物をやる」
斎藤さんは私の手を取ると、美味しそうな三色団子が3本乗ったお皿を乗せました。
「あの、これは?」
「さっき買ってきたのだが、一人では食いきれなかったんだ。余り物で悪いがおまえにやる。くれぐれも総司にとられるなよ」
「はい……、ありがとうございます」
「用はそれだけだ。引きとめて悪かったな」
「……あのっ!」
私はどこかへ行ってしまう斎藤さんを呼び止めた。


