全身に倦怠感を感じる身体を強引に立たせて歩く。
「あっ」
廊下の向かい側から永倉さんと原田さんの姿が見えました。
2人は私に気付くといやなものでも見るかのような目をして、来た道を引き返してしまう。
……永倉さんと原田さんは、艶子さんの根も葉もない噂を信じ切っている分類の人です。
そのため、艶子さんには優しく、私には会うたびにさっきのような目をして離れていきます。
口には出ずとも、話し掛けるなと言われているようです。
「はぁ……」
親しかった人たちからの冷たい態度を目の当たりにし、重い溜息を吐いてしまいます。
この頃平助君もどこかよそよそしい態度ですし、組長もどこか私をさけているような気がしますし。
でも、なにより深刻なのは土方さん。
土方さんとはあの日以来、口を聞くどころか目も合わせてくれません。
仲直りしようとしてもさっさとどこかへと行ってしまう。
「はぁ……」
「天宮」
「ひゃ、ひゃい!」
溜息を吐いている途中、背後から落ち着いた声で呼ばれました。
全く気付いていなかった私は驚きのあまり返事の声が裏返ってしまいました。