受け身をせずに体を地面に打ち付けたせいで、足首を捻ったらしい。

足首を抑えて蹲る私を見て艶子さんはクスクスと笑う。

「痛そうやなぁ。大丈夫かえ?」

「ええ……、これぐらい、大丈夫ですよ」

足の痛みを堪え、立ち上がる。

水に濡れた身体の体温はなくなり、足首には激痛。

正直、泣き出してしまいそうなぐらい辛い。

けど、辛さよりも艶子さんに負けたくないという気持ちの方が大きい。

だから涙を流さずにいられる。

「ふーん、そっか。じゃ、お大事にな」

艶子さんはどこかへ行ってしまう。おそらく、仲間のところだろう。

「ゲホ、ゲホッ……ケホ……」

胸が苦しくなり、乾いた咳がでる。

早く着替えないとこじらせていた風邪をさらにこじらせてしまう。

痛む足を引きずり縁側に上がる。

そして壁伝いに歩き、部屋に入った途端、力尽きて畳の上に倒れ込む。

倒れた拍子に懐から龍馬さんの懐中時計が飛び出した。

「ケホ、ケホッケホッ……」

なかなか治まらない咳をしながら懐中時計に手を伸ばす。懐中時計に手が届くと、私は胸に抱え体を丸めた。

「大丈夫……。私は一人じゃない……」

だから、まだ大丈夫……。