髪や顔からポタポタと垂れる雫を感じながら、私は呆然と座り込む。

ずぶ濡れの着物の上に冷たい風が当たり、全身にガラスの破片を打ち付けられているような痛みが走る。

……何が起きたのか全く分からなかった。

いや、何が起きたのかは分かる。突然、地面に落ちたと思ったら、大量の水が頭上から降ってきた。

頭を働かそうとしても、麻痺したかのように動きは鈍い。

誰がこんなことを……いや、誰かは決まってる。

「蒼蝶さん、ずいぶん素敵な姿やね」

「艶子さん……」

そこにいたのは嘲笑うかのような笑みを顔に張り付けた艶子さん。

その手には水が入っていたと思われる、底が深いバケツのような物がある。

彼女が私に水を掛けたのは明白だった。

「なんや、その目。蒼蝶さんが悪いんよ。勝手に外に出ていって帰って来なかったんやから」

だから、これはお仕置きとでも言いたいのだろう。

または勝手なことをするなという警告のつもりか。

どちらかは分からない。もしかしたら、どっちの意味もあるのかもしれない。

私は寒さで震える身体に力を込め、ゆっくりと立ち上がろうとした。

「っ……!」

地面に足をつけた瞬間、足首に電撃のような激痛が走った。