龍馬さんは寺田屋に入ると、数ある部屋の一つに入りました。
私も入ると開かれた戸が閉められる。
部屋には長州藩邸の龍馬さん部屋にあった地球儀や望遠鏡が置かれています。
「あの、ここっ……」
言葉を言いきる前に、龍馬さんに抱きしめられて言葉がでなくなった。
息が苦しくなるほど背に回った腕に力が込められる。
「あんま可愛い顔すんなや。自分を抑えられなくなるじゃろ」
「っ……」
耳元で囁かれた言葉に顔が熱くなる。
私は肩に掛かる龍馬さんの羽織をギュッと握りしめた。
さっきから夢の世界にいるような、霞(カスミ)がかって、ボーっとする思考の中。
私は龍馬さんの身体に完全に身を任せて
「私、龍馬さんのこと……好きです。だから、我慢しなくても……」
と、呟いた。
私を抱きしめていた龍馬さんの身体がピクッと跳ねると同時に、自分が呟いた言葉の意味を理解した。
私っ……、なんてこと……!
自分で言った言葉が信じられませんでした。
フワフワとした意識の中、唇が勝手に動き、まるで誰かが私の身体を操ったような、そんな奇妙な感覚でした。


