土方さんと別れた私は当てもなく町を歩いていました。
「っ……う……」
気を緩めればぐにゃりと歪む視界。熱い涙が冷えた頬を流れていく。
「やっぱり……辛いなぁ……」
艶子さんからの呪縛にも似た命令。
逆らわないこと。
そして、だまること。
私は艶子さんに逆らわないことよりも、だまることの方が辛い。
だまり、真実を話さなかったせいで、私は土方さんを怒らせてしまった。
今まで築いてきた信頼が崩れたのを感じた瞬間。
私は、もう一度この信頼を積み上げることができるのか。
もし、再び積み上がったとしても、それはひどく脆(モロ)いものになる。
歩くのをやめ、流れる涙を手で拭った。
……この時代に来てから、こうして泣いている時、いつも傍にいてくれたのは龍馬さんだった。
あの、あたたかい指で涙を拭ってもらうと、涙がピタリととまってしまう。
正月以来、会っていない龍馬さんの姿を思い浮かべれば、苦しかった胸の奥から切なさと愛おしさのようなものを感じた。
会いたいな……。
「龍馬さん……」
「何だよ」
背後から聞こえた声に、弾けたように振り返った。
そこにいたのは、紛れもなく、私が会いたいと思っていた人だった。


