ふふん、と勝ち誇った表情をすると師匠は少し笑ってくれた。

『わかった……。記憶は消さないでおく。その変わり、一生僕を忘れられないようにしてあげるよ』

師匠は顔を少し傾げると、私の唇と師匠の唇が触れ合った。

この感触……。

タイムスリップするときに感じた感触と一緒だ。

唇が離れる。そこには頬を微かに桃色に染める師匠の顔。

『こんなに離れたくないって思える女の子は蒼蝶だけだった。蒼蝶、好きだよ。ずっと蒼蝶のことが好きだった』

もう一度、唇が触れ合った瞬間、師匠は完全に消えてしまった。

残ったのは唇に残る感触だけ。

「師匠……」

徐々に意識が遠のき、私は頭に浮かんだ師匠の姿を最後に意識を失った。