『僕も、蒼蝶と話せて嬉しい。……本当に、嬉しい』
回される腕に力が込められる。
『蒼蝶、ありがとう……』
「師匠?」
私の肩に顔を埋める師匠の身体が震えていた。手を握れば、指を絡めてくる。
『蒼蝶があの時、僕を見つけてくれたから僕はこうやって嬉しいと言える。
150年の空白の時間を埋めてくれるだけの幸せな時間をくれたから、こうやって生きてた頃のような感情があるんだ』
師匠の言葉を聞きながら、私は初めて師匠の姿を見たときを思い出していた。
病院の桜の木の下にいた師匠は今よりも人間味がなかったと思う。
静かに座って空を眺める姿は、誰からも忘れられた像のような寂しさと冷たい印象を受けた。
でも、今はそんな寂しさも冷たい印象はない。


