最後に月を瞳に写し、目を閉じれば、あたたかい涙が頬を伝った感触がした。
後は、私がどうなるのか自然に任せるのみ。
元の時代に戻るのか。
それとも、このまま死ぬか。
「師匠……」
もし死んで幽霊になったら、私を迎えに来てくれますか?
『もちろん、迎えに行ってあげるよ』
聞こえた声にハッと目を開けば、私はあの異世界のような幻想的な空間の中に立っていた。
そして、前からゆっくりと誰かが私のところに向かって歩いてくる。
『でも、それは今じゃない。だって蒼蝶はまだ生きているんだから』
呆ける私に向かって微笑みかけてくれるのは、師匠だった。
「師匠……、師匠―――!」
胸に飛び込むと、師匠は私をしっかりと抱きしめて頭をよしよしと撫でてくれる。
「師匠ぉ……う、うぅぅ~……」
『蒼蝶は本当に泣き虫なんだから。会うたびに泣いてるよ』
「だって、師匠に会えたのが嬉しくて……」
『僕も蒼蝶と会えて嬉しいよ』
師匠は嬉し泣きをする私に微笑みながら、私が泣きやむまでしっかりと抱きしめてくれた。


