「……本当によかったの?」
「選べと言ったのはあなたじゃない」
「そうだけど……」
「すっかり忘れてたわ。自分がこの時代に来た目的。でも……これで、ようやく果たせるわけね」
小鳩が柄に手を置き、私も刀をいつでも抜ける状態にする。
「今度こそ私が勝つわ」
「ごめんだけど、今回も負けるつもりはないから」
鋼同士がぶつかるけたたましい音と火花が薄闇の空間に飛び散る。
互いに距離をとったそれぞれの手には、抜身の刀が握られていた。
こうやって、刀同士を向い合せていると、タイムスリップする前にやった剣道の試合を思い出す。
違うのは、今、お互いの手に握られているのは竹刀ではなく本物の刀。
刃が当たれば、それはすぐに死を意味する極限の状態。
けど、心は自然と落ち着いていて、逆にわくわくした高揚感が全身を支配し始めていた。


