刀を握りしめると、私は柄の先で強く組長の腹を殴った。
呻くような声のあと、組長の身体から力が抜ける。
気を失った組長を畳に寝かせると、偶然通りかかった隊士を呼び寄せた。
「すみません、組長をお願いできますか」
「あ、ああ!おい、誰か!」
他の隊士が現れると、組長は戸板に乗せられ運ばれていく。
その姿を見送った後、誰の目にも入らないように裏口から外へ出た。
私にはまだやることがある。ここで消えるわけにはいかない。
不思議な力を使い、再び道を走る。
そして、長州藩邸までくると、そこには二つの人影が固く閉じられた門の前で佇んでいた。
「小鳩、稔麿さん」
名前を呼べば、その場にいた二人が私の方を見た。
「蒼蝶……どうして……。それに、その身体……」
小鳩が私を見て驚く。
たぶん、私の身体が透けているんだ。


