私の師匠は沖田総司です【下】

「もう一つの湯呑は誰の?」

「これですか?私の分です。部屋で飲もうと思って」

「だったら僕と一緒に呑もうよ」

天宮さんは少し考えるような顔をすると、僕と向かい合って座った。

そして互いに静かに飲み始める。

均一の白色をした甘酒を飲むと優しい味が口いっぱいに広がって、一口で冷えていた体が温まった。

天宮さんって甘酒を作るのも上手なんだな。

甘酒から目を上げると、天宮さんと目があった。

天宮さんはなぜか僕をジーッと見ている。

「どうですか?」

「美味しいよ」

「よかったです」

安心したように微笑むと、甘酒を一口飲んだ。

「熱っ!」

天宮さんは猫舌みたいだ。

僕にとってはあまり気にならない熱さでも、彼女にとっては天敵といっていいぐらいの熱さらしい。

なぜ分かるかというと、天宮さんの目が裁縫の時によくやっている、猫のような寄り目になっていたからだ。

……何だか無防備な姿だな。

和やかな雰囲気を感じた僕は聞き出すなら今だと思った。