私の師匠は沖田総司です【下】


あれは……土方さんだ。

遅れてやってきた役人に手柄を取られないために、土方さんがひとりで役人たちを動けないようにしている。

役人が来たということは、思ったよりも時間が進んでいるのかもしれない。

早く、組長のところへ行かないと。

でも、正面から入るのは危険だ。裏口から入ろう。

裏口へ向かうと、裏口から出てくる二つの影があった。

あれは……。

「小鳩と稔麿さん……?」

稔麿さんが小鳩の手を引いて池田屋から出てくる姿だった。

もしかしたら、新選組に対抗するために長州藩邸に援軍を呼びに行ったのかもしれない。

稔麿さんのこれからの運命を思いだし、胸が痛くなる。

稔麿さんは長州藩邸に仲間を呼びに行くが、その門が開くことはなく、自害してしまうのだ。

でも、さっき稔麿さんと一緒に小鳩が出てきた。

……これで何かが変わればいいけど。