空を完全に闇に染め、星が瞬く下を、私は身体能力が上がる不思議な力を使って走る。
不思議な力を使っても、走るスピードは労咳になる前ほどだった。
弱りきった自分の身体が本当にいやになってくる。
この状態で池田屋の乱闘の中、組長のところまで辿り着けるだろうか。
……悩んだってしかたない。
とにかく早く、組長のところに行って労咳かどうか確かめないと。
記憶を頼りに夜道を走り、池田屋を目指す。
すると、徐々に辺りが騒がしくなってきた。
池田屋のすぐ近くまで来ている。
まだ池田屋は見えていないのに、ここまで乱闘が聞こえるなんて……。
そして池田屋が見えてくる頃、複数の提灯の明かりとその中央に立つ浅葱色の羽織を着た男性の姿があった。
わたしは思わず家の影に隠れる。


