本当は、私だって助けてあげたい。
でも、いくら願おうが泣き喚こうが、すぐそこまで迫った出来事は変えられない。
池田屋事件……。
新選組の名を一気に広め、明治維新を1年遅らせたと言われる大きな事件。
それが、今夜おきる。
絶望し、すすり泣く古高さんに後ろ髪を引かれながら蔵を出た。
暗い場所から明るい場所に出たせいで、目が眩む。
でも、待ち構えるように仁王立ちする土方さんの姿はハッキリ見えました。
「どうだ。はいたか」
「ええ……はい」
私は古高さんに言った言葉をそのまま土方さんに話した。
みるみる内に土方さんの表情は険しくなっていく。
その途中、一人の隊士が紙を持って現れた。
古高さんの店を調べて出てきたらしいその紙は、中身を見ずとも内容がわかる。
私は空を見た。
太陽は西側に傾いていた。
……そして、太陽が完全に沈む頃、池田屋事件は幕を開けた。


