私は立ち上がり、外へ出ようとすると、着物の裾が引っ張られる。
少し、後ろを向けば、古高さんの手がガッチリと裾を掴んでいた。
「待ってくれ……。言わないでくれ……。おまえがそれを話したら仲間が……」
さっきまでの狂気の目は跡形もなく消え、彼の目からは大量の涙が流れていた。
何度も涙声で必死に懇願する声に、胸が熱くなり、私も無意識のうちに涙を零していた。
「……古高さん。私が話さなくても、すぐに貴方の店の中から、さっき言った内容が書かれた紙を発見されてしまいます。貴方が捕まってしまった時点で、この運命は変えられません。
だから」
私は裾を掴む手が緩むと、もう一度、古高さんと向かい合った。
「私ができることは、少しでも早く古高さんを苦しみから解放することだけなんです。貴方に自白したという汚名をきせ、そして、貴方の仲間を救うことができない私を許してください……」


