「初めまして、古高俊太郎さん。私は天宮蒼蝶です」
「……」
古高さんが億劫そうに瞼を開く。
薄暗い空間の中でも、古高さんの目はギラギラと輝いていて、獣じみた狂気が見え隠れしている。
「私は貴方方が何をしようとしているか知っています」
「はっ……、何を……」
掠れた笑い声が静かな蔵に妙に響く。
私は一つ軽く息を吸うと、静かに語り始めた。
「祇園祭の前の風の強い日を狙い御所に火を放ち、その混乱に乗じて中川宮朝彦親王を幽閉し、一橋慶喜・松平容保らを暗殺し、孝明天皇を長州へ連れ去るつもりですね」
「なんで……」
古高さんはしまったと言うように、急いで口を引き結ぶが、さっきの一言は肯定を示すのには十分だった。


