私の師匠は沖田総司です【下】


最初に部屋に行く。でも、誰もいない。

洗濯物を干す場所にもいなかった。

どこにいるんだろうと思っていると、甘い匂いがどこからか漂ってくる。

甘い匂いを辿って行くと、勝手場にたどり着いて、中を覗いてみた。

すると鍋の前に立って何かを味見している天宮さんの姿があった。

「何してるの?」

「組長、いい所に来ました。甘酒を作ったんです、飲みませんか?」

「甘酒?飲む!」

「じゃあ、お部屋に持って行くので待っていてください」

「うん」

勝手場から出て廊下を出て、僕はピタリと足を止めた。

……天宮さんの好きなものとか聞けなかった。

さっき甘酒という甘い物に釣られて、思いっきり流された。

「何やってんだ、僕……」

自分が情けなくて項垂れながら部屋に戻る。

そして部屋で落ち込みながら待っていると、天宮さんがお盆に湯飲みを二つ乗せてやってきた。

「熱いので気を付けてくださいね」

「うん」

「じゃあ、私はこれで」

天宮さんは立ち上がり、部屋から出ていこうとする。