早く、行かないと。

その思いを一心に、重い体を引きずるように歩くと、腕を掴まれた。

「今は、行かないほうがいいですぜ。だって」

「枡屋の主人、古高俊太郎を捕縛し、今、土方さんが情報を聞き出そうと拷問をしているんですよね」

「!?どうして蒼蝶がそんなこと知ってるんでさァ」

私の腕を掴む手に力が込められ、普段から大きい目がさらに大きく開かれる。

「それは……ごめんなさい、話せません。でも、平助君、お願いします。何も言わずに手を離してください」

平助君は考えるように、眉を寄せていたけど、最後は手を離してくれた。

そして、私の正面にきて、背を向けて屈んだ。

「背中に乗りなせェ。歩くのしんどいだろィ?俺が蔵まで連れていってあげやす」

「でも……」

「つべこべ言わず、早く乗りなせェ」

今の平助君は梃子でも動かない気がして、私は素直におんぶしてもらうことにした。