組長から貰った菖蒲が、貰った頃よりも色がくすみ、茎を曲げはじめた頃。

蒸し暑い部屋の中で、うつらうつらと微睡んでいると、どこからか男性の悲鳴が聞こえた。

なんだろうと思って、痩せて棒のように細くなった手足を動かし、部屋から出ると、また悲鳴が聞こえる。

悲鳴は蔵の方からだとわかった瞬間、背筋が粟立った。

まさか……。

脳裏に過った予感を確認するために、壁づたいに歩き、蔵を目指す。

「蒼蝶。何でこんなところにいるんでさァ」

「平助君……」

偶然通りかかった平助君が私のところに来てくれる。

「寝てなくちゃダメですぜ。早く部屋に戻りなせェ」

「……ごめんなさい、平助君。私、早く蔵に行かないといけないの」

私の言葉に、平助君の表情が明らかに動揺したものへと変わる。

この表情の変化で、私の中の予感は確信へと変化した。