私の師匠は沖田総司です【下】


「部屋に前に『組長、部屋に立ち入るべからず』ってありましたね」

「ええ。でも、今は沖田総司組長って名指しされてますけどね」

「なぜ、また総司だけ」

「わかりません。でも……」

僕は空を仰ぎ見る。

どこまでも続いて、吸い込まれそうな青空には、小さい入道雲が浮いている。

「何か理由があるんですよ。天宮さんは意味も無くあんなことしません。

嫌われてたら話は別ですけど」

「総司……、フフッ」

山南さんが微かに笑う。

僕、笑うようなことを言ったかな。

「なぜ笑うんです?真面目な話をしてるつもりだったんですけど」

拗ねて小さく頬を膨らませると、山南さんは誤解だというように手を振った。

「すみません、笑ってしまって。ただ、嬉しくて」

「嬉しい?」

「ええ。大人になったなって思いまして」

「……僕はもう元服してるんですが」

「いやいや。私が言う大人になったは身体ではなくて心のことです」

「心……ですか?」