「部屋に前に『組長、部屋に立ち入るべからず』ってありましたね」
「ええ。でも、今は沖田総司組長って名指しされてますけどね」
「なぜ、また総司だけ」
「わかりません。でも……」
僕は空を仰ぎ見る。
どこまでも続いて、吸い込まれそうな青空には、小さい入道雲が浮いている。
「何か理由があるんですよ。天宮さんは意味も無くあんなことしません。
嫌われてたら話は別ですけど」
「総司……、フフッ」
山南さんが微かに笑う。
僕、笑うようなことを言ったかな。
「なぜ笑うんです?真面目な話をしてるつもりだったんですけど」
拗ねて小さく頬を膨らませると、山南さんは誤解だというように手を振った。
「すみません、笑ってしまって。ただ、嬉しくて」
「嬉しい?」
「ええ。大人になったなって思いまして」
「……僕はもう元服してるんですが」
「いやいや。私が言う大人になったは身体ではなくて心のことです」
「心……ですか?」


