私の師匠は沖田総司です【下】

謝っていても、山南さんはクスクスと笑いをやめなかった。

恥ずかしいけど、事実だからなにも言い返す事もできない。

やっぱり話さなければよかったと思っても、後の祭りだ。

「総司、分かっているとは思いますが、天宮君にあたってはいけませんよ。彼女はもともと自分から話すような子ではありませんし、総司だって聞かなかったでしょ?」

「……はい」

天宮さんが屯所で暮らすようになってからずいぶん時間が経ったけど、僕は彼女の好きなこととか、好きなものさえ知らなかった。

こういうのは初めて会った時とかに聞きそうだけど、僕と天宮さんの出会いは最悪だったから聞けずに今に至る。

それに、昔、どんな場所で暮らしてたとか。

小さい時何してたとか。

僕と出会う前の天宮さんの事だって知りたい。

「望むだけではなく、自分から歩み寄れば天宮君も応えてくれる筈ですよ」

「……そうですね。ありがとうございます」

そうだ。山南さんの言う通り、望むだけじゃダメなんだ。

ただ望んでいても何も変わらない。

僕は山南さんの部屋を後にすると、天宮さんの姿を探した。