「……俺じゃなくて、師匠さんを選ぶんだな」

龍馬さんの静かな声に、私はコクッと頷いた。

「……私にとって、龍馬さんはとても大切な人です。でも、それ以上に師匠のことが大切なんです。師匠が心の中にいるんです。

いっぱい、いっぱい優しくしてくれたのに、幸せを感じさせてくれたのに、龍馬さんを選べなくてごめんなさい。ごめんなさい……ごめんなさい……」

「蒼蝶」

頭を下げて何度も謝る私に、龍馬さんは優しく触れて名前を呼ぶ。

涙と雨に濡れている顔をあげると、龍馬さんはゆっくりと自分の唇を私の唇に重ね合わせた。

龍馬さんとの2度目のキスは、触れ合うだけですぐに離れた。

「私と口付けなんかしたら、労咳がうつっちゃいますよ」

「俺は丈夫だから気にすんな。それに、今は少しでもおまえに触れていたい」

「バカ……」