人がまばらに歩く道を歩き、寺田屋を目指す。

そして雨が降り出す頃、ようやく寺田屋に辿り着いた。

雨に濡れた着物が肌に纏わりつくのを感じながら、私は近くにあった石を拾い、龍馬さんがいつもいる2階の部屋の窓に向かってそれを投げた。

石はカッと音を立てて窓に当り、再び地面に落ちる。

龍馬さん、気付いてくれるかな。

祈るように窓を見上げていると、窓から龍馬さんが顔を出した。

「蒼蝶……」

数日ぶりに見る龍馬さんの姿に思わず笑みが零れてしまう。

龍馬さんはすぐに顔を引込めると、建物から階段を駆け下りるような音がした。

「蒼蝶!」

「龍馬さん」

寺田屋から出てきた龍馬さんに、息が止まるほどギュッと抱きしめられる。

濡れた身体に龍馬さんの温もりが伝わってきて、冷えた私の身体をあたためた。