刀は持っていけないけど、懐刀は何か役に立つかも。
胸に懐刀を仕舞うと、足音を殺しながら静かに部屋を出る。
何度も脱走しようとしたときの記憶を辿り、玄関を目指す。
「じゃあ、解散していいよ」
人の声がして、咄嗟に壁に身体を隠す。
そっと覗き見れば、浅葱色の羽織を着た沢山の隊士と、沖田総司とかいう1番隊の組長が立っていた。
1番隊の組長は私が部屋を出ることに誰よりも厳しい人だ。
みつかったら絶対に部屋に連れ戻される。
動かないでやり過ごそう。
そう思った時だった。
「っぐ……ゲホッ!」
急に胸が苦しくなり咳をしてしまう。
「そこにいるのは誰?……天宮さん?」
走る音がするとすぐに1番隊の組長が姿を現した。


