私の師匠は沖田総司です【下】


刀は持っていけないけど、懐刀は何か役に立つかも。

胸に懐刀を仕舞うと、足音を殺しながら静かに部屋を出る。

何度も脱走しようとしたときの記憶を辿り、玄関を目指す。

「じゃあ、解散していいよ」

人の声がして、咄嗟に壁に身体を隠す。

そっと覗き見れば、浅葱色の羽織を着た沢山の隊士と、沖田総司とかいう1番隊の組長が立っていた。

1番隊の組長は私が部屋を出ることに誰よりも厳しい人だ。

みつかったら絶対に部屋に連れ戻される。

動かないでやり過ごそう。

そう思った時だった。

「っぐ……ゲホッ!」

急に胸が苦しくなり咳をしてしまう。

「そこにいるのは誰?……天宮さん?」

走る音がするとすぐに1番隊の組長が姿を現した。