私の師匠は沖田総司です【下】

「それにしても、坂本。君、天宮さんばかりに構ってていいの?君にはツレがいたでしょ?」

「ああ、そこにいるぞ」

坂本から少し離れた場所にさっきの女が立っていた。

そして笑顔で僕に手を振っている。

僕の刀を押さえた時の身のこなしといい、本当にあいつは何者なんだろう。

「蒼蝶、俺とくじを引きに行かねえか」

「おみくじですか?」

「ん、そう。二人でさ」

天宮さんと坂本の会話を耳で捕えた瞬間、僕の眉がピクッと跳ねる。

坂本を見ると、そいつは意味深な顔で僕にニヤリと笑って見せた。

こいつ、まさかこの神社の噂を知ってるのか?

この神社には女の子が好きそうな噂があるんだ。

それは、正月の日にこの神社で男女が同時におみくじを引いたとき、二人が大吉ならいつまでも一緒にいられるというもの。

僕はこの噂を信じているわけじゃないけど、天宮さんと一度試したかったんだ。

だから彼女と二人で来たのに、この髪の毛クルクル男は……。

「いいですね。でも、組長や岡田さんも一緒にやりましょうよ。みんなでおみくじを引いた方が楽しいですよ」

「……」

「二人じゃないといけない理由があるんですか?」

「……いや、別に」

どうやら坂本は理由を言うのが恥ずかしかったらしい。

ふん、ざまあみろ坂本。