私の師匠は沖田総司です【下】

「よし、綺麗になったな」

しばらくして離れると、坂本の顔には満足そうな笑みが浮かんでいた。

それに対し、天宮さんは不満気な顔だ。

「一体何ですか。痛いじゃないですか」

「おまえが隙だらけなのが悪いんだよ」

ますます、天宮さんは意味が分からないというような顔をした。

でも、僕には手に取るように分かる。

おそらく坂本は僕が天宮さんの額に口づけした場面を見ていたんだ。

それで、僕の唇が当たったところを拭くことで、さっきの口づけを無かったことにしようとした。

どうして坂本の行動の意味が分かったかというと、もし僕が坂本の立場だったら、絶対同じことをしていたから。

坂本の天宮さんへの振舞いを見ていたら、いやでも坂本が彼女に気があるのが分かる。

僕も天宮さんのことが好きだから分かるんだ。

でも、残念だったね坂本。

屯所に戻ったら、また天宮さんの額に口づけするから。

君の行動には意味がないのさ。