外からは死角になる場所まで来ると、ピタリと足を止め、天宮さんの頭を撫でた。
「頭、大丈夫?ごめんね、さっきは大人げなかった」
「いっ、いえ。私の方こそ、ごめんなさい。ご心配をおかけしました」
「じゃあ、仲直りしよっか」
天宮さんのやわらかい頬を両手で挟んで、彼女の額に口づけた。
途端に天宮さんの顔がゆでダコみたいに真っ赤になる。
「何するんですか!」
「仲直りの印だよ」
「むぅ……」
僕を睨み付けてくる天宮さん。
でも、全く怖くないだよね。
真っ赤な顔で、睨み付けられても迫力なんかないし。
おまけに、身長差もあるから、背の低い天宮さんの睨みは上目遣いに変わる。
その顔がたまらなく可愛い。愛(メ)でたくなる。
しばらく、その可愛い顔を堪能していると、天宮さんの身体が後ろの方に傾いた。
何事かと思って、顔を前に向けると、見覚えのあるクルッとした髪が見えた。
「あっ、龍馬さん。痛い痛い!痛いですってば!」
「大人しくしてろ」
天宮さんの身体を引き寄せたのは、さっき別れた筈の坂本龍馬。
後ろから天宮さんの首に腕を回し、空いている方の腕の袖で、彼女の額をゴシゴシと擦っている。


