私の師匠は沖田総司です【下】


外からは死角になる場所まで来ると、ピタリと足を止め、天宮さんの頭を撫でた。

「頭、大丈夫?ごめんね、さっきは大人げなかった」

「いっ、いえ。私の方こそ、ごめんなさい。ご心配をおかけしました」

「じゃあ、仲直りしよっか」

天宮さんのやわらかい頬を両手で挟んで、彼女の額に口づけた。

途端に天宮さんの顔がゆでダコみたいに真っ赤になる。

「何するんですか!」

「仲直りの印だよ」

「むぅ……」

僕を睨み付けてくる天宮さん。

でも、全く怖くないだよね。

真っ赤な顔で、睨み付けられても迫力なんかないし。

おまけに、身長差もあるから、背の低い天宮さんの睨みは上目遣いに変わる。

その顔がたまらなく可愛い。愛(メ)でたくなる。

しばらく、その可愛い顔を堪能していると、天宮さんの身体が後ろの方に傾いた。

何事かと思って、顔を前に向けると、見覚えのあるクルッとした髪が見えた。

「あっ、龍馬さん。痛い痛い!痛いですってば!」

「大人しくしてろ」

天宮さんの身体を引き寄せたのは、さっき別れた筈の坂本龍馬。

後ろから天宮さんの首に腕を回し、空いている方の腕の袖で、彼女の額をゴシゴシと擦っている。